水龍敬ランドは《性的合意の向こう側》を10年先に描いた性典である

エロマンガ列伝
《出典:貞操観念ZERO 新装版 1》
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二次元コードというサイトを作るにあたって、私は
「どうせ、新しくサイトを作るなら既存企業さえもしのぐ緻密なタグ・カテゴリー付けをしたい」
「二次元コードという名前が示すように、(実写であってもデータベースに基づいた記号的なエロスも含めて)二次元の規範を整理するサイトを目指したい」
と決心して、性癖のデータベースを作るところからスタートした。

遠回りしたことで、1つ重要な収穫を得たので…今回はその話をしたい。

欧米では、「性的合意」をガチめに求められる。

よく、「日本人は集団主義で、欧米人では個人主義」なんて言われますが…これはエロの世界でも、当てはまる。

SSCとは、(実践における)すべてが安全な行動に基づいており、参加者全員がその行為にあたり十分に正気(英語版)であり、なおかつ参加者全員が同意していることを意味する。この考えは、BDSMが双方の合意によるものであり、性的暴行・家庭内暴力といった犯罪とBDSMを法的・倫理的に区別するものである。

BDSMの実践者のなかには、SSCとは異なった行動規範を好む人々もいる。「Risk-aware consensual kink」(「危険性を認識した同意的キンク」、略称RACK)と称される規範においては、参加する「個々人」の責任についてSCCよりも重点をおいており、参加者一人ひとりが自身の幸福・満足に責任を持つことが求められる。RACKの支持者は、SSCがリスクについての議論を妨げうると主張する。なぜならば、BDSMにおけるいかなる行為も真に「安全」なものとは言えず、低リスクな可能性についても議論することこそが真に「十分な理解に基づいた同意」のために欠かせないためである

安全、健全、合意に基づく(Wikipedia)

日本のエロス批判は明治時代に欧米文化を間違えて輸入している人が作っているせいで、
エッチなのはダメ、死刑!
という内容だが…欧米は80年代に「俺達はヘンタイであって、犯罪者じゃねぇ!」という線引きを明確にする・そのために男女問わず合意しているという前提を大事にする形をいち早く取って批判をかわしている。

俺達はヘンタイであって、犯罪者じゃねぇ!」と言った欧米人の中にはセックス・ポジティブ・フェミニストと呼ばれているフェミニストの一派もいます。「俺達はヘンタイであって、犯罪者じゃねぇ!」がまさかのフェミニスト運動だったのです!(日本でフェミニストと呼ばれる人はラディカル・フェミニズムか、マルクスフェミニズムという特に禁欲的だったり、社会のあり様それ自体を書き換えようとするフェミニストが中心なのですが、フェミニストも色々いるのです。男女平等なリベラルフェミニストや、「俺達はヘンタイであって犯罪者じゃない!」と叫ぶセックスポジティブフェミニスト。などなど、日本よりもフェミニストの範囲も広いのが欧米スタイルなのです。)

この「合意」という文化が日本入ってきたことで、
「強姦罪じゃなくて、不合意性交罪に名前を変え、適応範囲を広げよう」
「AVに出演している人たちは、合意していることを重要視しよう。合意してない作品は出させないようにしよう」
というふうに法律が変わっていった。…AVとか法律はね。

ただ、エロマンガはというと…よくも悪くも世相の影響に塗りつぶされていない。

合意よりも空気!日本のエロスが織りなす性癖達

正直いうと、日本でも女性のエロマンガ家やASMRブームがきている影響から、
「女性上位」とか、「マゾ向け」とか、「痴女モノ」とか、
女性側がノリノリな作品が表に出てくる機会はかなり増えています。

それでも、日本的な
「属している集団や、その場の気分でなし崩し的にエッチな関係になる」
というエロマンガ・エロコンテンツは多いんです。

一番売れているエロASMR「純愛おま◯こ当番」からして、なし崩し的に性処理係になった女の子のお話ですし?

まぁ、純愛おま◯こ当番のすごいところは、性処理者なのに全く悲壮感がないのです。
ヒロインがすごい勢いで順応しているし、ただれた青春を楽しんでいることで勃起のことを「おちんちんがイライラしている」というパワーワードを生み出しました。
その証拠に、DLsiteが「イライラ」と検索すると、エロASMRのトップサークルがこのワードをこすり倒して、性器の対決を繰り広げている様子を見ることができます。

話はASMRだけじゃ終わりません。
エロマンガの方もやっぱり「性処理」は売れていまして…ひぐま屋さんという最も売れているエロマンガサークルも性処理ジャンルの1つである得意としているんです。

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性処理系の作品は色々あるけど…定番で王道はやはりひぐま屋。
この人の筆おろし作品読むと「性処理…なんと甘美な響き…」と思うこと間違い無しの作品です…。

でも、性処理モノという文化自体が、極めて日本的な性癖です。
性処理系は個人の意思というよりも「集団から与えられた役割」「でも、実際にやってみると案外楽しい」という空気で動く作風です。
欧米的な「最初から合意しているヘンタイ同士の交流」とは一線を画す価値観です。

こんな理屈っぽい記事をここまで読んでくれた読者なら「なんで日本人は合意に無頓着なんだ?」と疑問に思うでしょう。

それは…婚姻の文化がぜんぜん違うところにあります。
日本は婚姻制度も貞操観念もアバウト。
明治時代に禁止されるまで、夜這いの文化も続いてました。

ここで誤解を解いておきたいのは、夜這いは決して現代人が想像するような「一方的な略奪レイプではない」という点です。実態は「男が忍び込んでやりたい放題」できるほど甘いシステムではありません。家に入れてもらえない、無視されるといった女性側からの拒絶は日常茶飯事!コミュニティ内での信頼や、女性(とその家族)の暗黙の了解をクリアした男性にのみ許された、いわば「ワンナイトラブを演出した様式美プレイ」という側面が強いものでした。もちろん、家柄や同調圧力という「環境の干渉」は存在します。しかし、これは現代の「自由恋愛」を謳歌する西洋社会も同じです。むしろ、学歴や家柄に支配されている現実を「自由」という看板で隠し、(神は死んだとか、構造主義とか、フィリップ・アリエスの〈子供の誕生〉のように)学者が分析しないと不平等に気づけない社会よりも、「最初から空気が支配している」と認め、なし崩し的な柔軟さ(抜け道)を内包している日本の方が柔軟な側面もあるとも言える…かもしれませんね。

一方で、欧州はローマ時代からずっと一夫一妻制です。
「死が二人を分かつまで」という信仰の一部として結婚を誓わされる国です。

だから、価値観が合わないのは性処理モノだけじゃないのです。

「エロテクで女の子を屈服させて、俺のものにする!」
「対等な契約を前提とせず、女性が心の底から屈服している。」
という
青水庵さん、朝凪先生のスタイルは欧米人からすると泡吹いて失神するレベルです。

特に朝凪先生は、このご時世でも(いやむしろ、以前よりも輪をかけて?)男性上位な作家先生です。
中でも騎乗院先生の2作品は最高にカウンター・カルチャーしてまして…

騎乗院先生のエロマンガ脳
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1作目の《騎乗院先生のエロマンガ脳》では「飯炊きオナホって女の子の憧れじゃないですか?」パワーワードで、全財産を同棲生活をスタートさせたことを歓喜する様子を描いてます。

令和を代表していただきたい人類史に残してほしい名言迷言ですね。
ちゃんとエロマンガとしてもすごい作品ですが…正直、肉迫したエッチシーンに負けないぐらいパンチラインが強いから、マンガとしても大好きです。

騎乗院先生のハーレム計画
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さらに、2作目では《騎乗院先生のハーレム計画》では「先生のような素敵な男性を王にするのが私たちマゾメスの使命」と言って、女の子を貢ぎまくって、主人公を王として祭り上げています。

最初からゾッコンの女の子が「乗り気じゃなかった女の子まで男のハーレムに加わるように調教する」というスタイルなので、《男の欲望とかじゃなくて、女の方も神との契約無視しとるやん!》と一部界隈から突っ込まれそうな作風です。

これがジャパニーズヘンタイです!
トップセールス&トレンドリーダーな作品群は、そもそも女の子の意思じゃない性処理係であるケースも多い。
しかも、女性が自分の意思で貢ぐ作品でさえも、「一夫一妻の契約」ではなく、自分がへりくだってでも、相手の男性をハーレムの王様に祭り上げようと奔走する。

このように、日本のエロマンガは西洋人が考える
「主体的な根っこでは対等なヘンタイ女が、セックスを自由に楽しむ」
という考えから反対側にいる…ように見える作品が多いです。

しかし、そこは八百万のヘンタイ大国ニッポン!
欧米人ルールをかなり近いタイプのエロマンガもちゃんとあります!

合意した大人のヘンタイしかいないテーマパーク…それが水龍敬ランドだ!

まず、「水龍敬ランド」といえば、「エロのパラダイス」みたいの思われがち。

ところが、実態は「西洋的な契約に基づいて、対等な立場で合意したヘンタイしかいない世界」という政治的に正しいフィクション!
というエロマンガの中でも稀有な存在なのです

水龍敬ランドとは――
(前略)
水龍敬ランドは、地方淫行条例の無い未来日本の何処かの自治体に存在するため、法律上の「性的同意年齢」を超えている年齢以上の者を大人とみなして、身分証明書と性病検査書の提示とともに自由に入場が可能です。
また子供がいる女性の為に、「性的同意年齢」を超えていない年齢以下の児童を預けて、主に性教育を指導する託児所も併設されています。
(中略)
水龍敬ランドにおけるセックスは、何処で行われるセックスよりも、安全で無害であることが保証されています。

ようこそ水龍敬ランドより

入園=契約: ランドの門を潜ることは、BDSMにおける「RACK(危険を認識した合意)」への署名と同義。
主体的なヘンタイ: 登場する女性たちは、搾取される弱者ではなく、自らの欲望に責任を持つ「主体的なプレイヤー」である。
この前提があるから、作中でどれだけ女性が男性にへりくだっていたり、男性が女性に搾り取られていても「主体的なヘンタイ同士の交流」だから問題ないのです!

これ、ただ建前じゃないのがが水龍敬ランドのすごいところ!

実際に、大人性的合意年齢であることを確かめるための身分証明書の提示シーンもでてくるし?

エロマンガらしい世界観の代名詞となっている水龍敬ランドだが…実は登場人物はちゃんと性的合意している作品でもある

読んでいただくと、子どもを併設する託児所に預けるシーンもでてきます。

作風は誰よりもイカれている日本が誇るエロマンガの最高峰マエストロ
ところが、エロマンガ上の世界観はコンプライアンスという言葉も浸透していない時代に、極めてエロマンガにコンプライアンスの要素を入れた、すっごくまともな大人。

こんなに肉食な女の子ばっか描くのに!

最近では当たり前になった《獣みたいな声を上げてセックスするやべえ女》の10年も前から描いていて、しかも今の作品よりも遥かに極北なのに!?

 

それでいて、こんなドエロイ世界観なのに…ドエロいのに…

 

どうして…っ!
ちゃんとエモい話もあるんですか!?

 

逆にエモい方が、心に残っちゃうやん…

 

なんで…。

 

 

という作品です。

ようこそ 水龍敬ランド
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しかも、2巻もあるし…。

ようこそ 水龍敬ランド せかんど
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あまりにもコスプレや世界観が広すぎて脳がバグる面白さがあるんですが…2巻の終盤の「DAY6.5」に収録されているアルバイトの話が…俺は大好き!

ママ友誘いで恥ずかしがりながら水龍敬ランドでバイトすることになったのに…

最後には、立派な水龍敬ランドの住人になるママってのが…ええんどす!

 

欧米的な「契約」「個人の意思」が前提にある世界観だからこその、
「ヘンタイ同士が合意の上で、エッチのことだけ考えて振る舞う」
という肉食すぎる世界観です。

「むき出しの性欲で飛びかかってくる」
「それでいて、女性陣の方が冷静に水龍敬ランドというイカれた世界を見ている」
という女の子の中にある振り幅を感じさせる生々しさもあるんです。

題材だけを見れば、「男に都合のいいエロマンガ」の最右翼に見えます。

ところがですね、
契約に基づき、全員が避妊具をつける。
女性陣がハメを外す一方で、冷静に戻った時に核心を突く言葉をいう。
そんな、「深いリアリティ」も備わった作品でもあるのです。

そして、根っこにあるリアリティが深いからこそ、現実社会とのコラボレーションが多い方でもあります。

この作品でも、水龍敬ランドにちなんだイベントやグッズも出ていることが、単行本の中に乗っています。
発売当時の空気感をミニマンガにしてくださっているので、そちらもお楽しみください。

そして、別作品では…なんと!
原作コラボAVとして実写化もしています。


貞操観念ZERO 槍間くるみの日常・槍間一家の休日
 

しかも、今みたいにエロマンガがホイホイ実写化される前のハシリとして実写化された作品の1つです。
(無垢ブランドから出ているところが余計おもろいですね!)

この作品も…原作のエロマンガがぶっ飛びすぎてエロ面白いから勧めたいです。

なにしろ、槍間家一家のお話は、
「水龍敬ランドのテンションで男を求めちゃうヘンタイが《水龍敬ランドという檻》から解き放たれるとどうなるか?
という狂気の沙汰を描いているシリーズですよ!?

契約という「これからエロいことする」と合意した上で土俵に立っても存在感がある人を描ける人が、一般社会で所構わずエロをぶちまけるんですよ!

面白くならないわけないでしょ💢

というわけで、ですね!
水龍敬ランドという《コンプライアンスがないとヘンタイがどれだけ時空を歪めるか》が楽しめるやっべぇ作品となっとります。

しかも、水龍敬ランドレベルなのに、コンプラ無視のド変態家族である槍間家一家のお話は3冊にわたってでてくるんですが…全部好き♡

まず、貞操観念ZEROという槍間家。

貞操観念ZERO 新装版 1
▼ この作品をチェックする

原作コラボAVにもなった作品です。
母+四姉妹がそれぞれに性欲強すぎて、それぞれのエピソードに読み応えのある素晴らしい作品。
四六時中エロいことしてる作品だから、95%は抜きどころなんですが…

母が娘の合コンに乱入してきたシーンには
「水龍敬先生、ギャグマンガもイケるのかよ!両刀使いか!?」
ってなりましたよ!

次に、色欲INFINITE。

色欲INFINITE
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これは…お母さんがぶっ飛びすぎて、肉便器扱いしてる(させられてる?)ヤリチン達が逆に心配するという稀有な作品です。

肉便器どころか、じぶんから「うわキツ」を極めていく、エロい熟女の鏡

エロマンガ広しと言えども、年頃の娘がいるお母さんが家に男をやってヤリマンライフを楽しみ、娘から呆れられ、人の家で男多数で串刺しにしてるヤリチンたちにさえ心配される稀有すぎるあたまのおかしい作品は、これだけです。
1000作以上エロマンガ読んでるはずだけど、他に見たことないです。

 

そして、私の(好みの問題で)実用性シコリティは一番高いと思ってるのが、GTS。

GTS
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槍間三姉妹の槍間沙世子による
「生徒をセックスで釣って成績を上げるグレートティーチャー沙世子」
という作品です。

これ、水龍敬作品では珍しい
「前戯から?ウブでエッチに慣れていない1から丁寧に描いている作品」
でして…やっぱ私はエモい水龍敬先生好きなんですよ。

こんな優しいキスをして生徒をその気にさせて…

最後はクチュ音聞かせて生徒をその気にさせるグレイトティーチャーの物語です。

西洋的な「契約に合意したヘンタイ同士がぶつかり合う作品」こそが、彼の唯一無二で真骨頂なのもよく分かるんです。
日本でこんなエロマンガ描く人いないし、海外にこのレベルのエロマンガ描ける人もいない「世界で一つだけの水龍敬先生」「元々特別なオンリーワン」ってのも痛いほどわかるんです!

ただ、日本のエロマンガらしい
「空気の中で心惹かれ合うエロさ」
「エロい人が性欲でピュアを飲み込み、相手の変態性をも引き出していくパワー」
も描けて…普通の人がヘンタイの階段を登っていくのが…俺にはすっごい刺さるんですよ!

まとめ

ぼくは水龍敬作品を再履修して気づきました!
水龍敬先生自身に契約と夜這いどっちかのカラーというよりも…引き出しが多すぎるか両方描けちゃうだけです!

そして、根っこが違う両方の作風を見たときに…
「人間っていうのは、IQを下げて享楽にふけるうちに自分の殻を破って夢中になっている時間が、最高に気持ちいいってこと」です。

酒でも、セックスでも、スリルでも、フィクションでも全部本質は一緒!
IQが下がって、自分という殻をぶち破ってくれる存在が大好きなんです。

「契約か空気か」という文化の違いというのは、ただプロセスの違いだけです。

女の子が自分と契約合意しておくことで「心置きなくヘンタイとしてIQをみんなで下げられる」という状況が好きなのか?
逆に、女の子と空気の読み合いをして「2人とも相手に夢中のバカップル2になる時間」が好きなのか?

集約するとそれだけなんです。

でも、確かなことは…

セックスやフィクションは最も低リスクにIQが下げられます。
酒やスリルに比べたら、命の危険にさらされる頻度は低いので、人類はもっとエロいことをして、エロい話をすべきです。

このブログがエロい話をしてみんなでIQを下げる時間を増やす一助になれたらいいな…ということで、今回は締めさせていただきます。

 

ご清聴ありがとうございました。

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